本の概要
「あなたがいなければ、この成功はなかった――」
シリコンバレーの巨人たちの裏には、
成功の全てを知り尽くした「共通の師」がいた!
原題は『Trillion Dollar Coach』
著者紹介
エリック・シュミット
2001年から2011年までグーグル会長兼CEO。
2011年から2015年までグーグル経営執行役会長。
ジョナサン・ローゼンバーグ
2002年から2011年まで、グーグルの上級副社長としてプロダクトチームの責任者を努め、アルファベットのマネジメントチームのアドバイザー。
アラン・イーグル
2007年からグーグルでディレクターとしてエグゼクティブ・コミュニケーションの責任者、セールスプログラムの責任者を歴任。
著書
読んでみて
ビル・キャンベルはアメフト選手からコーチとなり、ビジネス界に移ってからはシリコンバレーの大企業の経営陣と関わるなかで、その人柄とコーチング手法が高く評価された人物だ。
グーグルで成功するチームに共通する特性を見つけるための大規模調査「プロジェクト・アリストテレス」で明らかになった「5つのカギ」は、ビル・キャンベルの教えそのものだとアダム・グラントは述べている
グーグルの最高のチームは心理的安全性が高く(マネージャーの後ろ盾のもとで、安心してリスクを取れると感じていた)、明確な目標を持ち、仕事に意義を感じ、お互いを信頼し、チームの使命が社会によい影響を与えると信じていた。
本書はビル・キャンベルと関わった人たちが、彼の手法や考え方などの秘訣をオープンソース化するというコンセプトで、何をどのようにコーチングしたかが、次の4つのポイントに分けて(2章から5章にかけて)説明されている。
- マネジメントスキルをどうやって細部に至るまで実践していたか
- 一緒に働く人とどうやって信頼関係を築いていったか
- どうやってチームを構築していったか
- どうやって職場に愛を持ち込んだか
人を大事にする
ビル・キャンベルのすべての考え方のベースは人である。
人がすべて
どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネージャーのいちばん大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。われわれには成功を望み、大きなことを成し遂げる力を持ち、やる気に満ちて仕事に来る、とびきり優秀な人材がいる。優秀な人材は、持てるエネルギーを開放し、増幅できる環境を生み出すべきだ。
「支援」とは、彼らが成功するために必要なツールや情報、トレーニング、コーチングを提供することだ。彼らのスキルを開発するために努力し続けることだ。すぐれたマネージャーは彼らが実力を発揮し、成長できるよう手助けする。
「敬意」とは、一人ひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重することだ。会社のニーズに沿う方法で、彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けをする。
「信頼」とは、彼らに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させることだ。彼らが成功を望んでいることを理解し、必ず成功できると信じることだ。
そのうえで、ビルは4つの資質を人に求めた。
- 知性(さまざまな分野の話をすばやく取り入れ、それをつなげる能力。)
- 勤勉さ
- 誠実さ
- グリット(やり抜く力)
この本はテクニックの本ではない
人が気持ちよく働くことで成長しつつ、最大限能力を発揮し、同時にすぐれた結果をチームとして残す。そのために何ができて、何をすべきなのか?それは原理であり、思想であり、規律といったほうが近い。
読んでみればわかるが、奇をてらったような手法は一つもなく、どれも普遍的なことばかりだ。
それは基本的な原理原則に沿った行動が事例として紹介されているからだろう。
わかってはいるけれど、と思う部分もある。
知っていればいいのではなく、できていないと(組織に価値観が根付いていないと)意味がない類のものだ。
時に激しい言葉で叱咤激励しながらも、チームに結果を出させ、誰からも愛されていたビル・キャンベル氏。さまざまなエピソードから、圧倒的な人間力の持ち主であったことは疑いようがない。
彼のようにはなれないかもしれない。しかし、彼の原理原則と秘訣は本書によって世界に共有された。あとはこの学びを読者がどのようにチームや組織に浸透させていけるかがカギだ。
彼が生きていたら、愛を込めてこう言うだろう。
『Don't Fuck it up』
- チームや組織を率いるマネージャー
- 起業家