あなたの読書が試される。読書好きによる読書好きのための読書本。

本の概要

著名書評ブロガーによる読書に関する本。

著者紹介

Dain氏は書評ブログサイト『わたしが知らないスゴ本はきっとあなたが読んでいる』を運営されている方。

読んでみて

書評ブログを始めたわりに、書評専門のブログをほとんど読んだことがなかった。
もちろんよく読むブログで本が紹介されていれば記事は読んでいたし、興味を引けば手に取ることはあったので特段抵抗があったわけではない。自分にとって読書は能動的かつ積極的なものであり、別に薦められなくてもする行為と無意識に思っていたからかもしれない。

そんなわけで著者のDain氏のことは存じ上げなかったわけだが、本書を読みはじめてすぐに、彼の本に向き合う姿勢に刺激を受けるとともに、自分の読書に対する向き合い方も考え直すことにりそうだと感じた。

本書の構成

本との出会い方、図書館の活用方法、本の読み方、本の書き方、人生を良くするための読書といった5章仕立てになっている。出版社と著者によっては内容を薄めて5冊に分割しても成立するくらい、それぞれの章の内容が濃く、全方向に対応した読書に関する本である。
そして巻末には特別付録として著者による危険な『毒書』の書評が収められている。
読みたいと思えないテーマの本が多いのになぜか気になってしまうのは著者の文章力によるものだろう。

人を媒介にして本を見つける

著者の本との出会い方として、まず人を見つけるというものがある。
例えるなら『スゴ本検索エンジンとなりうる優れた本を知っていそうな人』を見つけることで、良い本に出会うといった寸法だ。
そのためにブログやAmazonのレビューも見るし、雑誌の特集、読書会やオフ会などで貪欲に人を探す。僕も早速、紹介されていた書評ブロガーをチェックした。自分が選ばない本との出会いに期待したい。

図書館の活用方法

僕は図書館を月に数回は利用している。移り変わりの早い書店とは違った本との出会いがあるところが好きだし、それなりに活用できていると思っている。しかし、著者のように司書に知りたいことを調べてもらうという発想を持ったこともなかったので、そういう意味ではまだまだ図書館の機能を使いこなせてはいないのかもしれない。

この章で著者は図書館を身体化しようと書いているが、それと同時に気にいったのが下記の部分。

家に本を置く場所がないから、ここで専門の司書さん込みで保管しているんだという妄想にふけろう。図書館こそ、積読の最終形態なのだ。

ヒップホップではリリックの中に一発で衝撃を食らわせるようなバースのことをパンチラインと呼ぶのだが、図書館こそ積読の最終形態とはなんとスゴいパンチラインか。

本の読み方

この章では遅読、速読、精読などなど、あらゆるスタイルの読書術に触れ、読書本や著名人の読み方について言及しながら、読むとはどういうことかについて書かれている。
その中で純粋に本を楽しむということを忘れているのではないかと指摘し、『ペナック先生の愉快な読書法』という本の中にある読書の幸福を伝えるためにあるという読書の権利10カ条を紹介している。

読者の権利10カ条

  1. 読まない権利
  2. 飛ばし読みする権利
  3. 最期まで読まない権利
  4. 読み返す権利
  5. 手当たりしだいに何でも読む権利
  6. ボヴァリズムの権利(小説と現実を混同する権利)
  7. どこで読んでもいい権利
  8. あちこち拾い読みする権利
  9. 声を出して読む権利
  10. 黙っている権利

本の書き方

この章に関しては小説家希望の人は必読じゃないかと思う。
レトリックの方についての紹介と考察や、漫画や映画のシナリオづくり、そしてコピーライターの言葉まで言及している。

人生を良くする読書について

最後の章は読書をどのように人生に活かすか、という点について書かれている。
それは魂の平穏のためであったり、子育てのため、死生観についてのものだったりする。

おわりに

例えば学校で面白い先生に出会い、夢中になって話している内容を毎回楽しく聞いているのだけど、中身がが濃いので集中力が必要になり、授業後はいつもクタクタ。そして、出される宿題はめちゃくちゃ多い。
でも、この宿題をちゃんとこなしていけば、面白そうな高みに到達できそうな気がする。そんな感じの本です。(伝わるだろうか。)
自分の好きなことがたまたま需要があるから発信しているだけ、というようなスタンスなので、正解を押し付けるような圧力がないのも心地良い。

あまりにも沢山の本を魅力的に紹介するものだから、Amazonの欲しいものリストがまた膨れてしまった。なんとも罪深い本である。(笑)
僕は自分の未熟さを痛感しつつも、これからも自分なりの読書ライフを精進していこうと思った。
読書好きを公言するなら読んでみてはどうだろうか。