職場で求められる最も重要なスキルは『礼節』である

本の概要

著者紹介

クリスティーン・ポラス氏はジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネス准教授。
活気ある職場を作ることを目的とし、グーグル、ピクサー、国際連合、世界銀行、国際通貨基金、アメリカ労働省・財務省・司法省・国家安全保障局などで講演やコンサルティング活動を行う。

読んでみて

無礼な人は会社に損害を与える

人や企業が無礼な態度を取ることで被る損失は一般に思われているよりもはるかに大きいという。
無礼な人がいるだけで周りの人間の健康を害し、顧客を失うなど損害を会社に与え、同僚の思考力や認知能力を下げ、さらに職場で攻撃的な人間を増やしてしまう。

3つの原則と5つの心得

礼節のある人や企業は、様々な恩恵を受ける。
そして礼節のある人には『笑顔を絶やさず、相手を尊重し、相手に耳を傾ける。』という3つの原則があるという。

さらに、心得るべきこととして5つのポイントを上げている。

  1. 与える人になる
  2. 成果を共用する
  3. 褒め上手な人になる
  4. フィードバック上手になる
  5. 意義を共有する

よりよい職場環境を生み出すために個々人が意識すべきことであると同時に、このような行動が生まれやすい仕組みを構築するのはマネジメント側の仕事であるとも言えるだろう。

さいごに

本書では『無礼な人』ということでフォーカスしているが、言ってみれば『腐ったみかん理論』と似ている。腐ったみかんが一つあるとまわりのみかんも腐ってしまうという理論だ。
チームビルディングする際にはいかに悪影響を与えそうな人を入れないことがポイントとなるし、問題のある部分は改善するか、場合によっては取り除く必要もある。

一方で、無礼な人間が経営者や管理職的なポジションにいる場合、どれだけ心ある人が頑張っても、優秀な人からどんどん辞めていき、行き場もモチベーションもない人間だけが残り、負のスパイラルに陥ってしまう。
自分もそのような職場にいたことがあるが、残念ながらこういう場合は上のポジションにいる人間自体が変わらないか、下の人がただ去っていくかのどちらかだろう。そしてそれは確実にビジネスにも影響する。

友人と、地元のとある飲食店についての話になった時のことだ。
店主がバイトを人前で怒鳴りつけていたのを見て、それ以来そのお店に行くのを辞めたと言っていた。
味は問題ないので、店がなくならない限り、彼は何年にも渡って通い続けていた可能性が高い。それどころか、毎回SNSで食事の写真を上げたりする人で、友人と外食することも多い人なので、少なく見積もっても数百杯、広がり方を考えるとそれ以上の影響があったといっていいだろう。
その話を聞いてから、自分も行かなくなってしまった。お金を払って嫌な気分になる可能性のあるところに行く人はよほどの変態でない限りいないだろう。礼節とは数字では表しにくいが、確実に数字には影響を与えるのだ。

本書では礼節を身につけるために大事にしたいことや、自分の身を守る方法、評価システムの改善など、様々な企業の事例が紹介されている。チームビルディングに携わる人や、自分の関わる組織やコミュニティの人間関係を改善したいと思っている人は読んでみるとなにかヒントが見つかるだろう。

著者のクリスティーン・ポラス氏によるTEDでの登壇

クリスティーン・ポラスはTEDにも登壇しているので合わせて見ることをオススメする。
同僚に敬意を持って接すると業績が上がるのはなぜか

余談だが、この本が職場に置いてあるだけで、従業員へのメッセージとして意外と魔除け的な効果も発揮するかもしれないと思ったことも付け加えておこう。

こんな人におすすめ!

  • 経営者や職場でチームをマネジメントする立場にある人
  • 個人としてチームの中でプラスの影響を与えたいと思っている人