本の概要
サブスクリプションという定額課金モデルに特化した内容の本。
著者紹介
佐川 隼人はテモナ株式会社の代表取締役。日本サブスクリプションビジネス振興会代表理事。
読んでみて
サブスクリプションは継続的に課金するモデルであり、SaaS(Software as a Service)事業などでは欠かせないビジネスモデルだ。
サブスクリプションでは、顧客数 × 顧客単価 × 継続期間(解約率)で売上見込をたてることができ、継続的な収益が見込めるため、事業計画が策定しやすいというメリットがある。
サブスクリプションの4つのモデル
著者はサブスクリプションには4つのモデルが有るという。
- 定期購入モデル
- 頒布会モデル
- 会員制モデル
- レコメンドモデル
定期購入モデル
毎月一定額を支払っている人に特定の商材を販売するビジネスモデル。
サプリメントや、食品、飲料水など日用品や消耗品が多い。
雑誌や新聞などの定期購読サービスも含まれる。
頒布会モデル
事業者側があらかじめコース設定を行い、毎月一定額を支払っている会員に対して、毎回異なる商材を販売するビジネスモデル。
ワインやコーヒーなどの嗜好品をソムリエなど知識のある人間がセレクトしてくれるものや、旬の食材を届けてくれるサービスなどがある。
会員制モデル
毎月一定額を支払っている会員に対して、サービスやコンテンツを利用する権利を貸与するビジネスモデル。
レンタルやシェアリングビジネス、Saas系のものや、飲食店やジム、教室などの実店舗ビジネス。
レコメンドモデル
顧客一人ひとりの嗜好や状況に合わせて、専門家が商品やサービスを提案したり提供したりするビジネスモデル。
スタイリストがコーディネートした服が送られてくるレンタルサービスや、健康や美容のアドバイスを行うサービスなど。
どうやってサブスクリプションを成功させるか
顧客にとっての価値をお得、悩み解決、便利の3つの視点から考える。
- プランニング
- 基本設計
- 販売促進(マーケティング)設計
- 会員管理設計、リピート施策設計
- 定点観測と改善
顧客が求めている価値を基に、どの客層に何を提供するのか考え、最初にどうやってリーチし、どのようにフォローし、改善するか。
かつてサプリメントを扱う会社のWebマーケティング周りのサポートをしていたことがあるのだが、この辺は従来の通販マーケティングとそれほど変わらないように感じる。ツールさえアップデートすれば、考えかたや進め方には十分対応できそうなので、過去の通販技術を徹底的に学ぶことでサブスクリプションビジネスに活かすことはできそうだ。
サブスクリプションモデルを導入している企業の話が参考になる
本書の4章目では、サブスクリプション事業を行う企業へのインタービューが掲載されている。
雑誌の定期購読サービスである『Fujisan』やエイジングケアブランドとしてサプリメントを販売する『MEJ』、月額制ファッションレンタルサービス『エアクローゼット』、企業向けにHRテック事業のjinjerを提供するネオキャリア、馬刺しなどの食材の定期購入サービスを提供する『大嶌屋』など、それぞれ、サブスクリプションという認識すらしていなかった雑誌の定期購読、昔ながらのサプリメント通販のWebへのシフト、今どきのサブスクリプション型サービス、企業向けのサブスクリプション、食材の定期購入など様々。
中でも参考になったのはエアクローゼットの社長の発言。
サブスクリプションモデルの場合、必ず継続的にサービスを展開し続けることになりますから、はじめる段階からかなり綿密に考えておくことは重要だと思います。
まずビジネスを始め、徐々に改善するとサービス開発手法が増えてきているなか、この考えかたは逆に新しく感じた。
サブスクリプションであることの本質的な意味を考えると、お客様と継続的に関係性を結ぶからこそ、定期的にコミュニケーションを図ることが出来ます。ですから提供するサービスは、「お客様に求められつづけるもの」でなければなりません。
さいごに
日頃から、ビジネスモデルなどに関心がある人からすれば特に目新しいことが書いてあるわけではない。自分もSaas企業への株に投資するうえで、サブスクリプションモデルに対する認識の漏れがないかをチェックするのが目的で読んでみたが、認識が概ね間違っていないことを確認できた。
ただし、下記のようにWeb周りをちょっと理解している人間なら認識できる間違いも書かれているため、著者がそれほどWeb周りに明るくないのではないかという疑念も湧いてしまう。
事業のヒントを探す際に、グーグルアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使って、月間検索キーワードをチェックしたり、(以下略)
キーワードツールと勘違いしたのだろうか?
サブスクリプション型のビジネスを検討しているなら初歩的な知識を得るために最初に読むぶんには損はないと思う。
- 自社の事業にサブスクリプションモデルを導入しようとしている人