USJ再建の立役者でありマーケティングの第一人者による戦略的キャリア論

本の概要

USJをV字回復させたもはや伝説的な存在ともいえるマーケティング界の第一人者である森岡 毅氏がこれから就職活動を行う娘のために書きためていた戦略的キャリア論。

著者紹介

森岡 毅 (もりおか つよし)
戦略家・マーケター。
株式会社 刀の代表取締役CEO
高等数学を用いた独自の戦略理論、革新的なアイディアを生み出すノウハウ、マーケティング理論等、一連の暗黙知であったマーケティングノウハウを形式知化し「森岡メソッド」を開発。経営危機にあったUSJに導入し、わずか数年で劇的に経営再建した。

著書

読んでみて

この世の中は残酷であり、学校では教えてくれない社会の仕組みと構造がある。
それを理解したうえで、自分の特徴を知り、どのように生きていくかを考えるためのヒントが詰まっている本だ。

どのようにキャリアを築いていくか

自分のキャリアを築いていく上でコントロールできる変数は3つしかない

  1. 己の特徴の理解
  2. それを磨く努力
  3. 環境の選択

資本主義社会とは、人間の「欲」をエネルギー源にして、人々を競争させることで社会を発展させるという構造と、サラリーマンを働かせて、資本家が儲ける構造があり、無知であること、愚かであることに、罰金を科す社会のことだと森岡氏は断言する。

その前提を理解し、サラリーマン以外に資本家という世界があることを知った上で自分を活かし、資本家の世界を射程圏に見据えるパースペクティブを持ってるかどうかが大事だという。

年収を決める法則

年収にはそれを決める法則がある。
どの職能を念頭にどの業界のどの会社に就職するかを選んだ時点で、将来における年収はほぼ自動的に決まっている。

  • 職能の価値
  • 業界の構造
  • 成功度合による違い

その人がどれだけ重要で代替不可能な能力を有しているか
年収の期待値の上下を知った上で、それでも自分にとって情熱を持てる好きな仕事を選ぶべきだという。

そして、どの業界でもある程度のプロになれば、それまで培ったスキルと実績を土台にして、『職能のステップアップ』が可能になる

自らを知る

どの職能においても重要なビジネスパーソンとしてのコンピテンシー(基礎能力)として分類がある。

Tの人(Thinking)

  • 知的好奇心が満たされるものが趣味になっている
  • 暇になると無意識に課題を設定して頭を使って遊んでいる

Cの人(Communication)

  • 人脈づくりが趣味のようなもの
  • 総じてコミュニケーション能力と社交性が高いのが特徴
  • 人との繋がりと、その繋がりを広く太く持てている自分自身に価値を置いている

Lの人(Leadership)

  • 達成感を味わうことが生きがいなので、趣味もその嗜好を反映したストイックなものが多い
  • とにかく挑戦することと、達成することが大好き

Iの人(Innovation,imagination)

  • イノベーション思考として『考える力の派生』と捉えればT属性の一つともいえる

さいごに

本来は自分の娘に宛てて書き溜めたものを書籍化したものであり、親心に満ちた本であるといえる。
人によって幸せの基準は異なり、自らの基準を正解だと押し付けるようとするような傲慢さはない。

スタンスとして一貫しているのは、『理由なき選択』や『視野の狭い選択』ではなく、『世の中の構造を理解し、どのような選択肢があるのかを把握したうえで、何を求め、何を選択するのか。』を決めたほうが良いということ。

社会の厳しさや不条理、自らの苦しかった経験をさらけ出し、何らかのヒントになればと書かれている著者の温かみを感じられる本だ。
就活を控えている学生や転職活動、キャリアに迷っている人などにはきっと響くのではないかと思う。

こんな人におすすめ!

  • 就職活動中の大学生
  • 転職を考えている人
  • キャリアについて悩んでいる人