[洋書] 家族を通して描かれるウクライナとトラクターの歴史『A Short History of Tractors in Ukrainian』

本の概要

母が亡くなって2年後、元エンジニアで変わり者の父が、ウクライナからやって来た豊満なバツイチ美女と結婚すると言い出した!父84歳、美女36歳。母親の遺産問題で仲の悪くなっていた2人の娘は一時休戦、財産とヴィザ目当てに違いないその女性から父を守るべくタッグを組み、追い出し作戦を開始するのだが…。ヨーロッパで話題騒然のイギリス発世界的ベストセラー、日本初上陸。

イギリスで100万部超えのベストセラー。
カバーには世界27カ国語に翻訳されていると書かれていたが、翻訳版のページによると37カ国で刊行されているとのこと。

Twitterで教えていただいたのですが、日本語訳も出ているそうです。
オリジナル版をジャケ買いした身としては、デザインもタイトルもとても残念な感じだ。

'An extraordinary read...nothing short of amazing.A rare treat, all too easy to gulp down in one greedy sitting'
Daily Express

'Hugely enjoyable...yields a golden harvest of family truths'
Daily Telegraph

'Thought-provoking, uproariously funny, a comic feast, A riotous oil painting of senility, lust and greed'
Economist

'Delightful, funny, touching'
Spectator

著者紹介

Marina Lewycka はウクライナ人の両親のもとにドイツの難民キャンプで生まれ、第二次世界大戦が終わる頃イギリスで育つ。
Sheffieldに住みながら、Sheffield Hallam大学で教鞭をとる。

読んでみて

イギリスで暮らすウクライナ系移民の家族のドタバタ劇。

みんなから愛された母親が亡くなった2年後に、84歳の父親が、若く魅力的な子持ちのウクライナ人の女性と結婚すると言い出し、家族は大混乱。
嫁いできた強欲なウクライナ人女性バレンティナは散財、家事放棄、浮気とやりたい放題で、彼女の目的がイギリスのビザとお金だとわかりきっていながら、いいように利用される父親。それでもウクライナでの生活に同情するような言動を口にする父親に対する娘たちの怒りや呆れ。

戦時中に生まれ育った姉と、戦後に生まれ育った妹の価値観の相違から起きる口論を通して明かされるウクライナと家族の暗い過去、そして元エンジニアの父によって綴られるトラクターの歴史。

小説や映画を通して新しい世界にふれることはよくあるが、この作品では移民家族の歴史、戦時中の混乱、トラクターの歴史、それらがユーモアとシリアスの不思議なバランスをもって描かれている。

恥ずかしながらウクライナには美男美女が多いという認識しか持っていなかったのだが、少しだけ理解が深まった気がする。こういう自分の中にある白地図の空白地帯に少しだけ色がつく感覚は心地よい。

本書の英語について

洋書の場合は、英語に関しても残しておこうと思う。

読みやすさ

全体を通してストーリー自体が複雑ではないし、文章自体の難易度はそれほど高くないので英検2級とかTOEIC730くらいあれば読めそう。
自分の場合、理解度は8割くらいだが、曖昧な部分はどもに語彙力によるものと、ウクライナの文化や歴史に対する認識不足によるものが大きい。
僕はあまり熱心に英語を勉強してきてはいないので、受験英語をきっちりやってきた人なら読みやすいんじゃないかと思う。

作品特有の部分

とにかくウクライナ人の名前が読めない。
そのたびに小さなストレスになるので、わりきって適当なカタカナ名に置き換えてしまうのが良さそう。

ウクライナ人の奥さんが間違った英語で罵倒するところや、父親の発音のウクライナ訛りについて書かれている部分は、小説だとこういう感じで書かれるのかと妙に納得しまった。

こんな人におすすめ!

  • ウクライナに興味がある人
  • ヒューマンドラマやコメディが好きな人