本の概要
人類の若さを左右する長寿遺伝子とは?いつまでも若く健康でいるために今すぐできることとは?山中伸弥教授の発見が、なぜ若返りを可能にするのか?「病なき老い、老いなき世界」における人生戦略とは?誰もが人生120年時代を若く生きられる!ついに、最先端科学とテクノロジーが老化のメカニズムを解明。ハーバード大学の世界的権威が描く衝撃の未来。
原題は『Lifespan: Why We Age—and Why We Don't Have To』
著者紹介
デビッド・A・シンクレアは科学者、起業家。ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務める長寿研究の第一人者。
マシュー・D・ラプラントはジャーナリスト、ラジオ番組司会者、作家。
読んでみて
本書で書かれているのは老化は治療可能な病の一種ということである。
数々の実験を通して解明されてきた生命が老いるメカニズムや、それを防ぐ様々な可能性について説明されている。
内容は決して易しくない
科学的な知識の下地があれば多少は違うのかもしれないが、根っからの文系の自分にとって耳慣れない科学用語が次々と出てくるため、難しいと感じる部分は多い。著者の主張を下支えする科学的な根拠を示すため、実験内容やその結果を説明している部分が多く、まるで登場人物の多い小説を読んでいる時のように次々と新たな用語が出てくる。
完璧に理解できてるとは思えないが、科学の素人が読んだ上で興味深かった部分についていくつか書いてみたい。
遺伝情報のデジタル情報とアナログ情報
遺伝情報にはA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)という4つの基本単位で構成されるコピーと保存が可能なデジタル情報とも言えるDNAと、変化しやすいアナログ情報のようなエピゲノムがある。
アナログ情報であるエピゲノムは親から子へと受け継がれる特徴のうち、DNAの文字配列そのものが関わっていないものを指す。DNAによらないこうした遺伝の仕組みを「エピジェネティクス」と呼ぶ。
このエピゲノムは老化や健康といった面だけでなく、広範囲でかなり重要な役割を担っているようなので、エピジェネティクスについては別の本で理解を深めたいと思う。
昔から良いとされていることの裏付け
エネルギー摂取量が欠乏している状態が続いたり、寒い環境にいたりするなど一定のストレス下にいると寿命は伸びるそうだ。これが運動や断食などが健康にいい理由だそうで、実験結果による科学的な裏付けも取れているようだ。
- 動物性タンパク質にマイナス面のあることは議論の余地がない
- 断食と運動をうまく組み合わせることで寿命は伸びる
本書で取り上げられている注目の成分
本書の中では様々な専門用語が出てくるが、老化に対して効果があるとされているものがいくつか紹介されている。
メトホルミン | 糖尿病でよく処方される薬だが、ダイエットに効果があったり、老化を抑制している可能性があるということで個人輸入をする人もいるようだ。市販薬はなく、副作用もあるようなので注意したい。 |
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NMN | 長寿遺伝子群を活性化させる成分。サプリメントで手に入る。 |
レスベラトール | 赤ワインに含まれる抗酸化物質。 |
MNMはサプリメントとして販売されているのでちょっと試してみたくもなる。
科学が医療を変えるかもしれない
著者は現代の医療を批判するわけではないが、統計や医者の歴史的経験によるものが大きいとし、ある人には効く薬が別の人にとっては効かないどころか、悪影響を及ぼしてしまうことがあると指摘している。
その上で、患者のゲノムを事前に把握せずに薬を処方することが時代遅れに思える日もそう遠くはないとし、老化の予防注射を打つ日も来るかもしれないという。
今後50年で、多種多様なテクノロジーが生まれたとして、控えめに見積もっても平均寿命は113歳になるとして、どこまでの治療をよしとするのか、長寿が世界に与えるインパクトについて考えるなど倫理面での整備も必要となると述べている。
著者が実践していること
最後に著者自身が医師ではなく科学者として健康のために日々実践していることが書かれていた。
- NMN1グラム、レスベラトロール1グラム、メトホルミン1グラムを毎朝摂取
- ビタミンDおよびK2の1日推奨量を摂取して、83ミリグラムのアスピリンを服用
- 砂糖、パン、パスタの摂取量をできるだけ少なくする
- 1日1食を抜く
- 毎日できるだけ歩く
- 植物をたくさん摂取し、ほかの哺乳類を口にするのをなるべく避ける
- タバコは吸わない、電子レンジにかけたプラスチック、過度な紫外線、レントゲンやCTスキャンを避ける
- 日中と就寝時は涼しい場所にいる
- BMIを保つようにする
さいごに
正直、内容は難しかったが、生命のメカニズムの解明が進んでるのを感じた。
新たな研究結果などが出てきて、今後常識が覆ることもあるかもしれず、すぐにすべてを実践するかどうかは別だが、さらに研究が進みエビデンスが積み上がれば、数年後にはコンビニなどでNMN何mg配合とかのドリンクが売られるようになるかもしれない。
昔の人が平均寿命が50歳くらいだったことを考えると、自分が80歳になったときには100歳越えているいる健康な人が沢山いるのかもしれない。その時に世代別の人口分布や労働環境、社会保障などを含めた社会構造は一体どのようになっているのだろう。
内容自体はとてもエキサイティングなので、現時点で科学がどこまで進んでいるのかを確認するためにも読んでみると楽しめると思う。
- 生命の研究の今を知りたい人
- アンチエイジングに関心の強い人