紛争地域で少年兵を量産した悪名高き自動小銃『AK-47』のリアルな話

本の概要

AK-47、通称カラシニコフ。
世界中で起きた内戦やクーデターで最も出回った悪名高き自動小銃である。
ロシア人によって作られた1947年製カラシニコフはパーツ数が少ないため、壊れにくく、メンテナンスが容易であったことから、世界の紛争地域には必ずカラシニコフが出回っている。

著者紹介

著者はルポライターの松本 仁一。
朝日新聞のナイロビ支局長、中東アフリカ支局長、編集委員を経て、著作ではボーン上田国際記者賞、日本エッセイスト・クラブ賞、日本新聞協会賞などの受賞歴もある。

読んでみて

本書は2004年に朝日新聞の朝刊に連載されていたものに2008年の発行時の時代に合わせて加筆訂正を加えたもの。ほんの十数年前までアフリカがこのような状況だったのかと驚くばかりだ。

子どもたちは少年兵に

西アフリカのシエラレオネで11歳の時に反政府ゲリラに村が襲われ、少女兵になったフォトマタの話から始まる。

青のワンピースの制服姿で、教科書やノートが入ったバックパックを背負ったまま、2キロ離れた中学校まで連れていかれた。中学生も集められており、生徒の数は男女合わせて約300人になった。そこからゲリラ支配地区のマブル村まで歩かされた。約40キロ、一日がかりだった。小さい子は中学生におんぶされた。マブルに着いた夜、女子は全員がレイプされた。声を殺して泣き明かした。

シエラレオネ内戦は、シエラレオネとリベリアの国境付近で取れる良質なダイヤモンドの利権による政争から内戦に発展し、子供達は誘拐され、兵士として育てられる。
反政府ゲリラは恐怖を与えるため、見せしめに手首を切り落とすといった蛮行も繰り返し行っていたそうだ。

開発者語る

現在、世界中で出回っているカラシニコフは旧ソ連製、旧ユーゴスラビア製、北朝鮮製、中国製のものだ。ではこのカラシニコフはどのような背景で生まれたのだろうか。
著者はロシアでミハイル・カラシニコフに会っている。

ドイツ軍の進行で自身も負傷し、ドイツ軍から祖国を守るという信念がAK-47の開発につながった。
祖国を守るために作られた自動小銃により各地で混乱と悲劇を生み出しているというのはなんとも皮肉なことだ。

希望の国ソマリランド

アフリカ中に蔓延する悲劇に気が滅入ってしまいそうになるが、その一方で希望の種もある。
それがソマリアの北西の町ハルゲイサを中心としたソマリランド共和国だ。

ソマリランド共和国は、バーレ政権が崩壊した1991年に独立を宣言した。
国際社会からは正式に承認されていない国でありながら、戦争に嫌気のさした部族の長老たちが暴力停止の会議を開き、それぞれの部族を説得し武装解除、ユニセフやUNDPのサポートを受けつつ、銃を回収して管理し、銃を封じ込めてしまった。
そして、法の整備と秩序の確立が進められている。

シエラレオネやリベリアはアメリカの奴隷解放運動後にアフリカに送り戻された人達と、先住民の間での軋轢が生じ、国家の体をなしてなかった。そこで旧共産圏で作られたAKが大量に出回ったことで悲劇が加速した。

冷戦が終わり、反映した国がある一方で、その負の遺産がいたるところで悲劇を生み出していたのだと知ることができる一冊。
『日本に生まれてよかった。』だけで済ませないために、僕たちは何ができるのだろうか。

こんな人におすすめ!

  • アフリカに興味がある人
  • 内戦や紛争への理解を深めたい人