『悪の食卓』マニアの間で話題となったアングラグルメ番組の書籍版

本の概要

「ヤバい世界のヤバい奴らは何食ってんだ!?」「食の現場にすべてが凝縮されている」
テレ東深夜の単発番組としてスタートしながら、“他じゃ絶対にありえない"その内容で視聴者に衝撃を生んだ人気番組が書籍化。

著者紹介

上出 遼平 (かみで りょうへい)
テレビディレクター・プロデューサー。1989年東京生まれ。早稲田大学を卒業後、2011年株式会社テレビ東京に入社

読んでみて

ハイパーハードボイルドグルメリポート』は、もともとテレビ東京で深夜放映された番組らしいのだが、僕はAmazonのプライムビデオで見た。

何がきっかけで見たのかは忘れてしまったが、とにかく『悪い奴が何を食ってるのか?』という、単純だけど興味深い事柄にリスクを冒して迫ろうという姿勢に興奮を覚え、一気に見てしまったことを覚えている。

本が出ていることを知り、読み始めて真っ先に感じたのは、この人は映像ディレクターである以前に純粋な物書きだということ。そして、ただ単に評判が良かったから出した本ではないということだ。

確かに、まえがきにもこのように書かれていた。

この本は、たんなる番組の書籍版ではない。世界中でカメラを回しながら、頭の中にはこの本がその終着点として想像されていた。だからこれは、『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の最終型でもある。

映像作品を見ているときには思いもしなかったが、本書で描かれている物事の機微や情景の描写といった表現はルポルタージュや紀行文として単体で十分成立するものだ。

スラム街や、怪しい場所、危険とされる場所に足を運び彼らの食を撮る。
一歩間違えれば事件に巻き込まれ、命の危険すらあるし、万が一事件として報道されれば、その後には自粛警察の類の精神構造を持った人達に『自己責任』という刃でこれでもかというくらいに傷つけられる。

そんなご時世ではリスクを冒した番組づくりなどできるわけもなく、やりたければYoutubeでやることが不文律となっている気がするのだ。いまやテレビ東京以外の民法は各社横並びのありきたりのつまらない番組だらけになってしまった。

『ハイパーハードボイルドグルメリポート』はテレビ東京の深夜という枠だからこそできた奇跡の番組なのかもしれない。

具体的な内容にはあまり触れないが、リベリアの少年兵や売春婦、台湾のマフィア、ロシアの麻薬密売人、カルト教団、ケニアのゴミ山に暮らす人々の食をめぐる危険な冒険にぜひ出てみてほしいと思う。

あなたにはきっとできないことだから。

こんな人におすすめ!

  • ドキュメンタリーやルポ好きの人
  • 世界の食に興味がある人