本の概要
「世界一幸せな国」と呼ばれるデンマークで、その名も「幸福研究所」というシンクタンクのCEOを務める著者による、幸福研究の最新報告書。
著者紹介
マイク・ヴァイキング
デンマーク幸福研究所所長。幸福と生活の質政策ネットワーク・ラテン・アメリカ創設者の1人。
読んでみて
本書は世界一幸せな国とされるデンマークのシンクタンク、幸福研究所が様々な国のデータや調査を比較しながら幸せについて広く考察している本である。
幸せの定義とは?
幸せの定義は時代とともに解釈が少し異なっている。
2012年に国連事務総長のパン・ギムンが国連会議で地球の総幸福量を定義するには3つが切り離せないと発表した。
- 社会的幸福
- 経済的幸福
- 環境的幸福
幸福を求め努力をすることが人類の基本目標であるべきだという決議が国連で採択されてから、政治的、学問的、社会的に幸福に重点を置く方向へのシフトチェンジしていく兆しが見えてきたという。
ブータンが重視している9つの分野
各国で幸福に関する調査が始まる中、経済成長よりも国民の幸福を目指す国家であるブータンの公共機関、国民総幸福量委員会が幸福度を高める上で重視すべきだと考えるのが次の9つの分野である。
- メンタルヘルス
- 健康
- 教育
- 文化保全
- 時間を有意義に使えているか
- よいガバナンス
- コミュニティ開発
- 生物多様性
- 生活水準の高さ
ブータンがGDPではなく、国民総幸福量(Gross National Happiness)を指標としていることに触れ、ロバートケネディが1968年にカンザス大学の演説で指摘したようにGDPは生産性と経済成長を測るツールだが、生活の質には機能しないという。
GDPに関しては以前紹介した本『ネオ・エコノミー』でもすでに時代遅れであることが指摘されている。
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デンマークは不幸な人を減らすのがうまい
デーンマークは世界一幸せな国と言われるが、自殺者がいないわけでもないし、不幸な人がいないわけではない。それでは何が違うのか?アメリカとデンマークを比較した時に、貧困層の幸福度に大きな差が見られるそうだ。経済格差の大きいアメリカと比較すると、デンマークは高福祉社会である。
つまり、デンマークは国家として国民の苦しみを取り除き、安心と安定を築くことに注力してきたのだ。
人間関係への満足度が幸福度に比例する
孤独な高齢者の死亡率は高く、社会的孤立は喫煙よりも健康を害し、認知症や鬱病のリスクを高める。
また、パートナーがいる人のほうが幸福であることが多いそうだ。
人間関係が幸福度にとって重要であることは間違いなく、コミュニティ活動が活発であることも幸福度に影響するようだ。
ボランティアをする人たちは長期的幸福度が高い
ボランティア活動を行っている人たちは総じて幸福度が高いそうだ。
著者はその理由として以下のものを上げている。
- 自分たちよりも不幸せな人と自分を比べることで、自分の置かれている状況に感謝する
- ボランティア活動は人生に意義を与える
- ボランティア活動は人間関係を築く機会をもたらしてくれる
お金の使い方
自分のためよりも、他の人にお金を使った人のほうが幸福度が高かった。金額の大小ではなく、他の人に何かを与える行動自体が大事。
都市部よりも田舎のほうが幸福度が高い
最近、都市部から田舎に移住する人が増えている気がするが、幸せになるためには良い選択なのかもしれない。
都市部よりも田舎のほうが幸福度を感じやすいそうだ。
- 比較対象する相手が違う。都市部では貧富の差が激しい
- 田舎のほうが人間関係が良好
- 住もうとする人のタイプが違う
さいごに
この本は『幸福』についてがテーマにはなっているが、結果としての幸福論であることは否めない。
当然のことだが、こうすれば幸福になれるというものではなく、こういうふうに暮らしている人のほうが幸福を感じていることが多いといと結果としてわかった。という類の本なのだ。そのため、自分のコントロールできる範囲で幸福感を得やすいライフスタイルに変えるという意味では役に立つのかもしれない。
どちらかというと、この本で書かれていることを最も理解すべきなのは、直接国づくりに関わる政治家や官僚だろう。
今の日本はアメリカ追従型モデルともいえ、経済格差は進む一方だが、。未来を考えた時に、社会全体として不幸な方向に進んではいないだろうか。
利権ではなく、幸福を考えて行動する政治家が増えた先に本当に幸福な世界が待っているのかもしれない。
- 幸せについて考えたい人