本の概要
小説の批評を行っている著者による文章教室。
著者紹介
三宅 香帆は文筆家、書評家。天狼院書店の元店長。
読んでみて
可愛いらしい見た目であまり深く考えてなさそうに見えて、すごく優秀な子っていますよね。
あるいは気弱そうにみえて、歌いだしたら声量がハンパないとか。
この本はまさにそんな感じの本。
カバーが可愛らしいけど中身は濃いので、舐めてかかるとやられてしまう、いい意味での詐欺本だ。
この本の目的はズバリ『バズる文章の書き方』
- (文章の終わりまで読もうかな)と思ってもらう。
- (この人いいな)と思ってもらう。
- (広めたいな)と思ってもらう。
著者は自身が書いたブログ記事が何度かバズるなか、その理由を分析し、たどり着いた結論を下記のように書いている。
「文章の内容や情報の価値について悩まずに、文章でみんなに楽しんでもらうことを優先したから。そして読んでくれた人に、「いいなあ、この文章」って好感を持ってもらおうと工夫していたから」なんじゃないかって。
バズらせるためのテクニックを駆使したわけではないし、それでは一過性のものになってしまう。
みんなに好きになってもらえる文章を書けるようになるが一番の近道だという。
そして、様々な文筆家の文を取り出し、その文章を魅力的にしている要素を考察したうえで、どのように機能し、どう活かせるのか?を、大きく『バズるつかみ』、『バズる文体』、『バズる組み立て』、『バズる言葉選び』の4つに分類し、法則としてまとめられている。
文章を取り上げられる人物は歴史小説家からエッセイスト、小説家、漫画家、俳優、作詞家などなど、とにかく幅が広い。
この本には全部で49つの法則が収録されている。
それぞれ4,5ページなので、その気になれば2時間もあれば読めてしまう。しかし、一気に読むのではなく、休憩をはさみながらゆったりと読むことをおすすめしたい。
これは使えそうだ!とその場で文章を書きたくなるものもあれば、いまいちピンとこない法則もある。その全てを欲張って身につけようとするのではなく、自分のスタイルに無理なく取り入れられそうなものをいくつかピックアップして、意識的に使ってみると良さそうだ。きっとそれだけで文章の幅が拡がり、表現力は増すだろう。
おわりに
タイトルが『バズる文章術』となっているのは大人の事情かもしれないが、いい年して無理やりアイドルの格好をさせられているような違和感がある。
バズったという事実はあくまでも結果であり、そのためにはどれだけ魅力的な文章を書けるか。どれだけ文章力を積み上げられるかのほうが重要だろう。そのために、この本を読み、村上春樹からは文章のリズム感を、司馬遼太郎からはカメラワークの視点を、三浦しをんからはセリフによる本物っぽさを学ぶのだ。
それが結果としてバズれば、それはもう最高に違いない。
- 自分の文章をより魅力的にしたいと思ってる人
- 文章における表現の幅を拡げたいと思ってる人